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カシマコートの堅い話

カシマコートの開発背景

アルマイト皮膜は工業的には装飾や単なるアルミニウムの表面保護膜としてではなく、耐摩耗性材料として重要です。
特に普通アルマイトや硬質アルマイトは、非常に硬くて強い為、多くの工業製品に活用されています。

■普通アルマイトや硬質アルマイトの強み

・耐摩耗性が良い

工業部品の摺動部分に多用されています。摺動材料としてみると、アブレシブ摩耗※に対してはその硬さを生かして非常に強いです。

※アブレシブ摩耗・・・摩擦面間に介在する異物により、その表面が削り取られる摩耗現象のこと。

■普通アルマイトや硬質アルマイトの弱点

・摩擦係数が大きい

摩擦条件によって摩擦相手とのなじみ性が悪い事があります。ひどい時にはかじりや焼き付きといった凝固摩耗をおこすことがあります。

アルマイトに潤滑性を付与できればメリットは一層大きくなるのではないか?
と考えて開発されたのが二硫化モリブデン含浸アルマイト・・・
それが、『カシマコート』です。

困難な発想への挑戦

二硫化モリブデン含浸アルマイト(以下カシマコート)は、アルマイト皮膜の微細孔中に(径は10~数10nm、数億個/m㎡)
電気化学的方法により固体潤滑材である二硫化モリブデンを含浸した複合アルマイトです。
双方の長所を合わせた硬くて耐摩耗性はよく、かつ潤滑性をもったものになります。
用途は低い摩擦係数や円滑な摩擦運動、長期間にわたる耐摩耗性などが要求される摺動部品材料です。一般にアルマイト皮膜の微細孔の中に物質を含浸するのは難しく、特に固体物質を含浸することは、形状、大きさの点では難しいとされます。
我々の微細孔内で二硫化モリブデンを合成するにはどうのようにしたらよいかという観点から開発したもので、孔の奥から完全に侵食しています。
微細孔の底まで含浸できるということは、アルマイト皮膜自体が摩耗して無くなるまで二硫化モリブデンの効果が発揮されるということであり、そのメリットは大きいと考えられます。

カシマコートの製法

まずアルミニウムやアルミニウム合金製の品物を硫酸や蓚酸の電解浴中で1次電解して多孔質タイプのアルマイト皮膜を生成させます。
次いで、モリブデンのチオ酸塩を主成分とする水溶液中で、アルマイト処理した品物を陽極にして2次電解をします。
すると微細孔内にモリブデン硫化物が析出してきて微細孔内に固定されます。
このモリブデン硫化物の析出過程は以下のように推定されます。

  • 1
  • 2次電解液中ではモリブデンのチオ酸塩は解離してチオモリブデン酸イオンとして存在する。
  • 2
  • このイオンは負に帯電しているために陽極に引き付けられて電気泳動あるいは拡散によって微細孔内に進入する。またこのイオンの大きさは微細孔よりはるかに小さいので孔の奥までも自由に行ける。
  • 3
  • このようにして微細孔内に進入したチオモリブデン酸イオンは、直接の電解反応あるいは微細孔内でおきるアルミニウムの陽極酸化反応により放出される水素イオンによる水素イオン濃度の変化のために電解してモリブデン硫化物として析出する。以上のようにして析出したモリブデン硫化物を2次電解後に加熱処理するとグラファイト構造の結晶になる。

2次電解時のモリブデン硫化物の析出物の析出進行状態はX線マイクロアナライザーによる分析結果から判断すると、析出はまず微細孔底のバリヤー層界面から始まって電解時間の経過とともに微細孔入り口へ向かって進行していき、微細孔内を埋めつくします。さらに電解するとアルマイト皮膜表面に黒色の析出物が付着してくるのがわかります。

  • 図1にモリブデン硫化物が微細孔をほぼ満たした試料のX線マイクロアナライザーによる分析結果を示します。
  • 図2に2次電解を直流定電流法で行った時の電圧1時間曲線を示します。

電圧は時間の経過とともに直線的に上昇します。これは2次電解液が中性であるために2次電解時におきるアルミニウムの陽極酸化反応によってバリヤー層が成長するためです。このようにバリヤー層が成長して電圧が上昇しながら2次電解が進行するために、電解反応はバリヤー層の薄いところから順次進行します。したがって電着の均一性が非常によくなり、またバリヤー層が厚くなるために耐食性も向上します。

  • モリブデン硫化物含浸アルマイトの断面方向のX線マイクロアナライザーによるMo,Alの分布状況
  • 2次電解時の電圧ー時間曲線

潤滑性

  • カシマコートのアルマイト皮膜の潤滑特性を図3表1に示します。
    この試験はテーパー式磨耗試験機で各種材料のコロを試験片の上に乗せ、試験片を回転させた時の摩擦力を測定したものです。摩擦力/荷重を動摩擦係数としています。試験結果によると各種金属材料に対して、潤滑化処理により動摩擦係数が1/2~1/3に低減しています。また試験後の試験片の表面状態は平滑でほとんどすきがなく、摩擦相手とのなじみ性がよいことが確認できます。

    表1 二硫化モリブデン含浸による摩擦係数の変化

    摩擦相手 焼入鋼 硬鋼 真鍮 硬質クロムめっき
    アルマイト処理 0.64 0.66 0.40 0.64
    カシマコート処理 0.23 0.30 0.24 0.28
    摩擦相手 焼入鋼 硬鋼
    アルマイト処理 0.64 0.66
    カシマコート処理 0.23 0.30
    摩擦相手 真鍮 硬質クロムめっき
    アルマイト処理 0.40 0.64
    カシマコート処理 0.24 0.28

    動摩擦係数が1/2~1/3低減!

  • 動摩擦力の経時変化

用途

上記の特性のようにカシマコートは潤滑性を活かした耐摩耗性材料として有望です。
実用性評価のために社内で電線製造ライン上に使っているプーリー、ローラー、コロ、各種ガイドを試作した一例をご紹介します。
ポリエチレンや塩化ビニールを被覆した細径の電線を貯線するために走らせながら横滑りさせるロールがあります。このロールには低い摩擦係数による円滑な滑りと耐久性が要求されますが試作、試用結果、試用開始2年後も低い摩擦係数を持続して順調に稼動しています。
なお比較試験を用いた硬質クロムめっきロールおよびアルマイト処理だけのロールでは摩擦係数が大きすぎて円滑に滑らず直ちに使用不能になりました。また約200μmの厚さにテフロン樹皮をコーティングしたロールでは、初期特性は摩擦係数が非常に小さく良好でしたが、使用中にテフロン樹皮層が減少して摩擦係数が増加する傾向がありました。以上のほか、ガイド、プーリーなどではアルマイト処理だけのものと比較すると、耐摩耗性が向上して寿命が長くなっています。特に裸銅線用では潤滑処理面に銅粉が付着しにくいことなどが特長です。
このほか、カメラ部品の一部の摺動部への採用、自動車、電気産業をはじめとする各種工業部品への試用検討を展開中です。
以上のようにいくつかの社内実例によってカシマコートの実用性を実証しています。

主な特長

  • 1
  • 摩擦係数が低くて、耐摩耗性がよい。
  • 2
  • 二硫化モリブデン含浸処理はむらがなく均一に処理できる。
  • 3
  • 膜厚はアルマイト皮膜の厚さできまるので寸法精度がよい。
  • 4
  • 電気絶縁性がよい。
  • 5
  • 耐食性がよい。
  • 6
  • 非粘着性である。
  • 7
  • 耐熱性に優れる。

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