アルマイト(陽極酸化処理)とは、アルミニウムを陽極(+極)で電解処理して
人工的に酸化皮膜(アルミの酸化物)を生成させる表面処理のことです
アルミニウムは酸素と結びつきやすく、空気に触れていると非常に薄い酸化皮膜を作ります。
この自然に作られる皮膜で保護されているので一般的に錆びにくい、いわゆる耐食性が良いといわれています。
しかし、この皮膜は非常に薄いので、環境によっては化学反応で腐食してしまいます。そのため表面を保護する表面処理、すなわちアルマイトが必要となります。
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アルミ製品を取り付けた治具を、電解液(硫酸または蓚酸)の中に入れます。
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治具に電極を繋ぎ、プラスの電気を流す。また同時に陰極に同様に電気を流します。
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電気分解により、アルミニウムの表面に酸化皮膜(アルミの酸化物)が付きます。
孔(ポアー)とは酸化皮膜の穴の事を言い、その大きさは1つ10~30nm(ナノメートル)。その数は、なんと1cm²の中に数十億~700億個あると言われています。地球の人口が1cm²の中に軽々入ってしまう程の数です。
アルミに電流を流す事で、表面の微小凸凹部が溶解(浸透)+同時に酸化皮膜が成長し、時間の経過と共にセルと呼ばれる立体構造を形成します。基本構造は六角形の鉛筆を束ねたものがアルミ地からニョキニョキと生えていると思ってもらえばわかりやすいかもしれません。
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アルミニウムは活性な金属の為、空気中で自然に20nm程度の酸化皮膜が出来ています。
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電解液中でアルミニウムが酸化され、酸化皮膜が成長する。
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皮膜表面の凹部に、より高い電解が発生する為硫酸イオンがその部分に入り込み局部的に皮膜が硫酸アルミとなって溶出し、表面に無数の孔があきます。
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孔の底では、酸化反応と皮膜の溶出反応とが同時に進行し、孔が規則正しくのびた構造になります。
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皮膜の厚さは、電解時間に比例します。
アルマイト(陽極酸化処理)により出来た孔の中に染料を浸透させ、
封孔処理(染料の入った穴に蓋をする処理)により、酸化皮膜が取れない
限り剥げない染色になります。
■カラーアルマイト
束ねた鉛筆の芯の部分、酸化皮膜で言う”孔”が赤ければ赤いアルマイト
になります。その芯の部分に染料を入れ、酸化皮膜に着色する事を
カラーアルマイトと言います。
■自然発色
酸化皮膜は染料の色さえ変えれば、どんな色にもなりますが、
他に自然発色と言って陽極酸化処理によってアルミニウム合金の皮膜そのものが独特の色調に発色する方法もあります。
普通アルマイト(白・カラー) | 硬質アルマイト | |
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処理概要 | 硫酸浴中で処理する最も一般的な処理 | 低温の電解槽中で処理し、厚く硬い皮膜を生成する |
色調 | 通常白色であるが染色により任意の色を着色できる | グレー系に自然発色、用いるアルミ素材と膜厚によって差がある |
硬度 | 200HV前後 アルミ<普通アルマイト<鉄 |
400HV以上 鉄(非熱処理)<硬質アルマイト |
膜厚 | 一般的に5~25μmの範囲で使用条件等で決定 | 耐摩耗性、電気絶縁性から一般に20~70μmの範囲で指定 |
寸法 | 膜厚の1/2寸法プラス » 詳しくはこちら | 膜厚の1/2寸法プラス » 詳しくはこちら |
主な用途 | 建材、工業製品、家庭用品、装飾品![]() |
シャフト・ロール等摺動部品、航空機部品![]() |
普通アルマイト(白・カラー) | |
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処理概要 | 硫酸浴中で処理する最も一般的な処理 |
色調 | 通常白色であるが染色により任意の色を着色できる |
硬度 | 200HV前後 アルミ<軟質アルマイト<鉄 |
膜厚 | 一般的に5~25μmの範囲で使用条件等で決定 |
寸法 | 膜厚の1/2寸法プラス » 詳しくはこちら |
主な用途 | 建材、工業製品、家庭用品、装飾品![]() |
硬質アルマイト | |
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処理概要 | 低温の電解槽中で処理し、厚く硬い皮膜を生成する |
色調 | グレー系に自然発色、用いるアルミ素材と膜厚によって差がある |
硬度 | 400HV以上 鉄(非熱処理)<硬質アルマイト |
膜厚 | 耐摩耗性、電気絶縁性から一般に20~70μmの範囲で指定 |
寸法 | 膜厚の1/2寸法プラス » 詳しくはこちら |
主な用途 | シャフト・ロール等摺動部品、航空機部品![]() |
アルマイトとメッキは全く違うものです
金属の表面加工ということでひと括りにされている場合もある陽酸化処理とメッキは、実は全く違うものです。
陽酸化処理はアルミの表面(標準の面)から上に成長皮膜、下に浸透皮膜というように上下に成長しています。一律に成長するので、元のアルミ表面が凸凹だった場合凸凹のままアルマイトがかかります。
表面を塗装のように平らにならす効果はありません。
また、一度硬質アルマイトをかけたものを再アルマイトする場合、肉痩せしてしまいます。それは、この浸透皮膜を化学的にいったん全て落とす必要があるからです。
一方、メッキの方は被メッキ物上に順番に他の金属を乗せていくので全く別の理屈でできているといえます。