アルミニウムを代表するものといえば、日本に住んでいれば必ず目にする1円玉です。
正確には造幣局が製造した「1円玉アルミニウム貨幣」と言い、純度100%の純アルミニウム製です。また、種々の元素を添加して合金とした物をアルミニウム合金と呼びます。
飲料水の缶から自動車の部品まで様々な所に使われているアルミニウムですが、いずれも純アルミニウムにない特性が付加することで、様々な分野で活用されています。
材料へのニーズが多様化し、一層高度になる今日では、アルミニウムもまたよく知られている従来の特性にとどまらず、新たな機能性を付加して、先端分野へ着実に展開されています。
軽い
比重は鉄や銅の約1/3です。その軽さを生かして、摺動・回転部品の作動効率を高めたり、製品の軽量化など様々な効果をもたらします。
強い
比強度が大きく、最近では高剛性の合金が開発され、航空機や大型構造物用の材料として注目されています。
錆びにくい
空気中で自然に、ち密で安定した酸化皮膜を生成し、この皮膜が腐食を防ぎます。
加工性
が良い
塑性加工がしやすく、薄肉や複雑形状も容易に成形することができ、成形後に様々な追加工を施すことが比較的容易です。
電気を
良く通す
電気伝導率は銅の約60%ですが、比重が約1/3のため、同じ重さの銅に比べて2倍の電流を通します。エレクトロニクス分野での需要も増えています。
磁気を
帯びない
非磁性体で磁場に影響されません。電子医療機器・メカトロニクス機器、リニアモーターカーなど様々な用途の製品に生かされています。
熱を
良く伝える
熱伝導率は鉄の約3倍。「熱をよく伝える=急速に冷える」という性質から冷暖房装置、エンジン部品、各種熱交換器、放熱フィン、ヒートシンクなどに使われています。
低温に強い
極低温下でも脆性破壊がなく靭性が大きいのが特長です。宇宙開発やバイオテクノロジー、極低温の超電導関連の最先端分野でもこの特性が脚光を浴びています。
光や熱を
反射する
よく磨いたアルミニウムは、赤外線や紫外線、電磁波、各種熱線をよく反射します。鏡面加工を施してこの特性を一層高め、エレクトロニクス製品にも多く使用されています。
毒性が無い
無害・無臭で衛生的。重金属のように人体を害したり土壌を傷めたりしません。この特性を生かして、食品や医薬品の包装、飲料缶、医療機器などで使用されています。
鋳造しやすい
融点が低い、溶けた状態でも表面が酸化皮膜で覆われガスを吸収しにくい、湯流れがよいといった性質から、薄肉や、複雑形状の鋳物をつくることができます。
接合しやすい
溶接、ろう付け、はんだ付け、電気抵抗溶接、リベット接合、接着など様々な方法で容易に信頼性の高い継手が得られます。設計と施工の合理化を実現します。
真空特性
が良い
真空装置の材料に使ったとき、金属自体からのガス放出率が非常に小さく、真空到達性能が他の材料に比べて大変優れています。
再生
しやすい
融点が低いため、溶かして簡単に再生できます。再生地金をつくるのに必要なエネルギーは、新地金と比べてわずか3%で済むことから経済的な材料だといえます。
美しい
素地のままでも美しい金属ですが、表面処理を施すことにより多彩な色をつけることも可能であり、デザイン性が強く求められる分野に最適の材料です。
アルミニウム合金にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が違い、用途も様々です。
JIS規格 | 合金の種類 | 種類と用途 |
---|---|---|
A1000等 | 純アルミニウム | 強度は低いが加工性、耐食性、溶接性、電気・熱の伝導性に優れ、反射板、装飾品、容器、電気器具などに用いられる。 |
A2000等 | Al-Cu系 アルミと銅 |
強度や切削性がよく、航空機、輸送機器、機械部品、構造材に適するが、厳しい腐蝕環境下での使用には不向き。 |
A3000等 | Al-Mn系 アルミとマンガン |
耐食性はそのままで、強度が増強され、加工性は少し劣るが、純アルミと大差ない。器物、建材、容器など広い用途がある。 |
A4000等 | Al-Si系 アルミとケイ素 |
鍛造ピストンや建材用パネル、溶接用心線に用いられるが。融点が低いためろう材としても用いられる。 |
A5000等 | Al-Mg系 アルミとマグネシウム |
低マグネシウム材は研磨によって高い光輝性を持ち、装飾材などに。高マグネ材は缶蓋や構造材として使用される。海水や汚染に強く、船舶材にも使われる。 |
A6000等 | Al-Mg-Si系 アルミ、マグネシウム ケイ素 |
6061は銅を微量添加したもので各種構造材に使用、耐食性も良い。また、6063は強度は落ちるが押出性が良く、建材関係に多く用いられる。 |
A7000等 | Al-Zn-Mg系 アルミ、亜鉛 マグネシウム |
7075は超々ジェラルミンと呼ばれ、アルミニウム合金の中で最高の強度で、航空機やスポーツ用具に使われる。 |
JIS規格 | 合金の種類 |
---|---|
種類と用途 | |
A1000等 | 純アルミニウム |
強度は低いが加工性、耐食性、溶接性、電気・熱の伝導性に優れ、反射板、装飾品、容器、電気器具などに用いられる。 | |
A2000等 | Al-Cu系 アルミと銅 |
強度や切削性がよく、航空機、輸送機器、機械部品、構造材に適するが、厳しい腐蝕環境下での使用には不向き。 | |
A3000等 | Al-Mn系 アルミとマンガン |
耐食性はそのままで、強度が増強され、加工性は少し劣るが、純アルミと大差ない。器物、建材、容器など広い用途がある。 | |
A4000等 | Al-Si系 アルミとケイ素 |
鍛造ピストンや建材用パネル、溶接用心線に用いられるが。融点が低いためろう材としても用いられる。 | |
A5000等 | Al-Mg系 アルミとマグネシウム |
低マグネシウム材は研磨によって高い光輝性を持ち、装飾材などに。高マグネ材は缶蓋や構造材として使用される。海水や汚染に強く、船舶材にも使われる。 | |
A6000等 | Al-Mg-Si系 アルミ、マグネシウム ケイ素 |
6061は銅を微量添加したもので各種構造材に使用、耐食性も良い。また、6063は強度は落ちるが押出性が良く、建材関係に多く用いられる。 | |
A7000等 | Al-Zn-Mg系 アルミ、亜鉛 マグネシウム |
7075は超々ジェラルミンと呼ばれ、アルミニウム合金の中で最高の強度で、航空機やスポーツ用具に使われる。 |
アルミニウム合金は、最終製品のいろいろな要求や用途に必要な性質によって、2種に大別します。
アルミニウム合金の他にも、用いられる事の多い鉄と銅と特徴を比較しました。
元素名 | アルミニウム(Al) | 鉄(Fe) | 銅(Cu) |
---|---|---|---|
軽さ | 比重2.7 | 比重7.9 | 比重8.9 |
長所 | 弾性が少なく軽い、柔らかい | 剛性が強く丈夫で重い、弾性もある |
1.熱伝導性が良い 2.低温に強い 3.電気伝導性が良い 4.非磁性体である 5.抗菌効果がある |
融点(℃) | 660.4 | 1535 | 1084.5 |
密度/硬度 | 2700 kg/m3, 2.75 | 7874 kg/m3, 4.0 | 8920 kg/m3, 3.0 |
熱伝導度 | 237 W/(m*K) | 80.2 W/(m*K) | 401 W/(m*K) |
電気伝導度 | 37.7×/m × 106S/m | 9.93×/m × 106S/m | 59.6×/m × 106S/m |
耐食性 | 錆びやすい(ステンレスを除く) | 錆びやすさは普通 (変色や緑青がある) |
錆びにくい |
非磁性 | 影響されない | 影響されない | 影響されない |
加工性 | 弾性が少ないので曲げるとひびが入りやすい。柔らかいし切断しやすい。 | 弾性があるので薄ければ曲げやすい。密度があるため切削は大変である。アルミや真鍮の2~3倍の時間を要する。 | 弾性があるので曲げにも適している。切削もしやすい。 |
代表的な利用 |
1円硬貨 アルミホイル アルミ缶 鍋、やかん 建具(窓サッシ、ドアなど) 鉄道車両(車体、吊り金具など) 自動車(ホンダNSX、プリンスR380など) オートバイのフレーム テルミット溶接の還元剤 |
鋼材 缶 工業製品 家庭用品 装飾品など |
電線や基盤の配線 エアコン 冷蔵庫 建築内装材 冷凍用機器 電線・ケーブルの材料 靴下、靴の中敷き 絨毯、マットなど |
元素名 | アルミニウム(Al) |
---|---|
軽さ | 比重2.7 |
長所 | 弾性が少なく軽い、柔らかい |
融点(℃) | 660.4 |
密度/硬度 | 2700 kg/m3, 2.75 |
熱伝導度 | 237 W/(m*K) |
電気伝導度 | 37.7×/m × 106S/m |
耐食性 | 錆びやすい(ステンレスを除く) |
非磁性 | 影響されない |
加工性 | 弾性が少ないので曲げるとひびが入りやすい。柔らかいし切断しやすい。 |
代表的な利用 |
1円硬貨 アルミホイル アルミ缶 鍋、やかん 建具(窓サッシ、ドアなど) 鉄道車両(車体、吊り金具など) 自動車(ホンダNSX、プリンスR380など) オートバイのフレーム テルミット溶接の還元剤 |
元素名 | 鉄(Fe) |
---|---|
軽さ | 比重7.9 |
長所 | 剛性が強く丈夫で重い、弾性もある |
融点(℃) | 1535 |
密度/硬度 | 7874 kg/m3, 4.0 |
熱伝導度 | 80.2 W/(m*K) |
電気伝導度 | 9.93×/m × 106S/m |
耐食性 | 錆びやすさは普通 (変色や緑青がある) |
非磁性 | 影響されない |
加工性 | 弾性があるので薄ければ曲げやすい。密度があるため切削は大変である。アルミや真鍮の2~3倍の時間を要する。 |
代表的な利用 |
鋼材 缶 工業製品 家庭用品 装飾品など |
元素名 | 銅(Cu) |
---|---|
軽さ | 比重4.5 |
長所 |
1.熱伝導性が良い 2.低温に強い 3.電気伝導性が良い 4.非磁性体である 5.抗菌効果がある |
融点(℃) | 1084.5 |
密度/硬度 | 8920 kg/m3, 3.0 |
熱伝導度 | 401 W/(m*K) |
電気伝導度 | 59.6×/m × 106S/m |
耐食性 | 錆びにくい |
非磁性 | 影響されない |
加工性 | 弾性があるので曲げにも適している。切削もしやすい。 |
代表的な利用 |
電線や基盤の配線 エアコン 冷蔵庫 建築内装材 冷凍用機器 電線・ケーブルの材料 靴下、靴の中敷き 絨毯、マットなど |
私たちの身の回りには金属でできた製品が溢れていて、それらのほとんどは、表面に何らかの処理が施されています。それは、金属が様々な弱点を持っているからです。
摩耗する
金属がこすれ合うことで減り削れてしまい、ガタが出たり、動作が不安定になるなどの影響が発生します。細かい振動でも摩耗は進行します。
腐食しやすい
周りの環境によって侵食されることを腐食(サビ)と言います。見た目が悪くなる、強度や耐久性に影響が出る等の問題が発生します。
色味が無い
金(こがね)、銀(しろがね)、銅(あかがね)、鉄(くろがね)、錫または鉛(あおがね)で”五色の金(かね)”という言葉あったくらい、金属は色味が決まっています。
金属を使う以上は、どんな物でも腐食します。すり減る、色がない、潤滑性がないといった弱点からは避けられません。それらを克服するために世界中でたくさんの処理技術が発明されており、今も続々と新しい方法が生み出されています。
日ごろ使っている日用品を眺めてみると、それぞれ特徴的な表面処理、コーティングが施されています。表面処理とは金属の欠点を補完する行為であることが分かります。
アルミニウム合金で出来たフライパンの外側は、
耐熱性の高い焼き付け塗装がされています。
フライパンの内側はフッ素樹脂加工がされています。
フライパンの裏側、コンロと当たる部分はメーカーによって違いが出るところでもあります。
側板と同じ塗装をしている場合と陽極酸化処理をしている場合と、削ってアルミをむき出しにする事で熱伝導のロスを減らしている場合があります。
清涼飲料水の缶は樹脂コーティングがされています。
写真はB&Oのベオサウンド1。
スピーカーグリルはアルミ製で陽極酸化処理(アルマイト)によって
色鮮やかに着色され、他にはないスタイリッシュな表現を見せています。
表面処理は金属の着色も重要な目的です。